蝦夷リス

近道への遠回り・数十年前作家になることを考え、特殊な語れる体験がなければと思い日本を後にしました。文壇のなかでのコネなどなかったからです。二十代までは必ずこの癒着がものをいうと信じてきてました。

中国人の初老の婦人が

小屋のなかで腕を振ってとにかく音を立てていると、いきなりドアが外から開けられた。現れたのは中国人の小柄で痩せぎすの、顔に皺が幾つも通っている気難しそうな婦人だった。彼女はたいへんなエンジャルに私には映じた。この際、どんな外見をもっていても、これほどありがたち存在はなかった。彼女は
 「また、あんたかい?」
 呆れ顔でそんな言葉を横たわる私に吐きつけるのだった。わたしは、これが最初ではないのかと驚かされたが、どうにかこの状態から解放してもらうことが先決だった。だが、彼女があらわれてもわたしは自分の体をまったく操作できないので、外の薄暗がりと新鮮な空気みたいなものはドアから窺えたが、それだけだった。
 彼女はあとでまた来るからと言って再びドアを閉めてしまった。どうもこの切符売りの小屋は彼女が管理しているか、彼女のものみたいだった。
 わたしはあとで着てくれるということに希望を持って再び夢のなかで寝入ったようだった。寝ている状態なのに、そのなかでも寝るというのはおかしな話だが、それがわたしの見た長いながいコマ状態の夢だった。