蝦夷リス

近道への遠回り・数十年前作家になることを考え、特殊な語れる体験がなければと思い日本を後にしました。文壇のなかでのコネなどなかったからです。二十代までは必ずこの癒着がものをいうと信じてきてました。

G合戦 不思議な指名  草稿

一九九〇年二月のお天気の良い朝だった。清明はホテル警備の夜の仕事から帰宅し、ベットに横になり寝ようとしていた。だが、こんな陽光が引いたカーテンの間からも漏れ射し、ブレーキを細かく踏んで路肩から車道にでようとする音やこれから仕事にでるための自家用車の走行する音、そして窓のすぐ下の歩道をかかとを立てて歩く中年女性の話し声や、早くも罵り声を放つ運転手や自転車のペダルを踏むものの大声などが放たれる。人声がやむと住宅街の中庭のコンテナーと植え込みから小鳥の声が喧しく聞こえてくる。
 心休まる睡眠に落ちていくという雰囲気ではなかった。特にお天気が良い朝には、人々も、散歩に連れられる犬から小鳥から一際神経に障るほど賑やかな感じだった。
 そこに電話が喧しく鳴り出した。妻はもう仕事にでかけているし、息子のほうは仕事もしてないのになぜ眠れるのか、まず電話ぐらいでおこされるような者ではなかった。
 やむなくベットから跳ね起きて白い受話器を清明が耳にあてると、きいたこともない濁声の初老の婦人の声が彼の聴覚を襲った。
 「」