蝦夷リス

近道への遠回り・数十年前作家になることを考え、特殊な語れる体験がなければと思い日本を後にしました。文壇のなかでのコネなどなかったからです。二十代までは必ずこの癒着がものをいうと信じてきてました。

コマ状態から目覚めて

いきなり意識を失ってしまった、というのは恐ろしいことである。自分の体がまったく管理できないことをそれはあらわしている。


私としては普通に目が覚めたという感覚だった。ただ、様子を見に来たという感じの、多少の好奇心をかかえた若い医者が
 「今日はいったいいつなのかご存知ですか」
 と訊ねたのはヘンダなとちょっとだけ思った。人を食っているとも思った。
 私がいつの日付を言うのか彼は興味津々という感じで私をみつめていた。
 「私は2023年」と答えていた。月日になるともっとめちゃくちゃだった。
 日付をわがしにきくことにより、私の頭が正常かどうか確認しているようでもあった。他にも中年の背の高く髪の毛の少ない間延びした顔の医者が近寄っておなじように今日の日付を私に質問してきたが、この日付は頭脳が稼動しているか否かを確認するための一番良い質問であるようだった。
 「あなたは電気ショックを二度も受けていて、生と死の境に居たんですよ」
 そういわれてもわたしは


今眠りから目覚めて普通のコンデション、体調でいるような気分なのでまったくそのつき迫った状況が想像できないし、感じられないのであった。人事でしかなかった。
 「三週間コマ状態だったんですよ」
 三週間という期間にはさすがになっとくするものが私にもあった。かなり長いしかもはっきりした夢をいくつも見ていているからだ。しかもそれを記憶している。現実感たっぷりでとても夢だとは思えない世界がずっと展開していた。