蝦夷リス

近道への遠回り・数十年前作家になることを考え、特殊な語れる体験がなければと思い日本を後にしました。文壇のなかでのコネなどなかったからです。二十代までは必ずこの癒着がものをいうと信じてきてました。

安いイチゴを買いこんでしまって

最近の二つの経験。
先週の土曜日の午後に歩行者天国を歩いていると、苺のあまくすっぱい香りに気がついた。掘っ立て小屋というか、出店というか、テントからはみ出るほどにフルーツを並べた八百屋の前で足がとまった。
もちろん、やすいということ、またもっとやすくしてあげるとかいわれて、そもそもこの八月の暑い季節にまだ苺が売っていることにこちらは驚かされていたが、進められて買ってしまった。しかも12箱ほど買ってしまい、袋がその重さで破れないかどうか、それだけ心配しながら家に持って帰った。
すぐにセルロイドといったらいいのか、透明の器に入った苺を三箱プラスチックの電子レンジ用の器にいれて、洗って食べ始めた。砂糖もミルクも用いずに食べた。さすが安もの苺の味は殆どしなかった。若い雑草の味を薄くしたような味覚だけがあった。もちろん、苺の味のするものも1割ぐらいはあったかとおもう。
たくさん食べてしまわないと腐ってしまうという気持ちもあり、さらに三箱を器にいれて水を注いで洗って食べようとおもったが、もう食欲はなくなっていた。


残りはフルーツ蝿とかにたかられるかもしれないとおもい、ビニール袋にいらたままにしておいた。
月曜日の今日、水に浸した苺をみると、幾つもすでにカビが白く水に使ってない部分に輪を作ったり、小さな帽子になっていてついていた。もちろん捨てた。
そしてビニールク袋をちょいっと嫌な予感を覚えながら開けてみると、まず中は生暖かく湿気が高く、蒸れているという状態を右手の指先や手首にまで感じた。生暖かい湿気に触れられたというほうが妥当な感触であった。
次々に外にだして台所にならべた。もうフルーツ蝿のことなどは頭になかった。白い黴がすでに私の目を射ていたからである。


黴が生えやすく、培養し易い状態においてしまっていたことを遅ればせながら知った。しかし、本当にもう遅かった。
入っていた六箱のうち、めぼしいものを途ってへたをナイフで切り取りながら、さすがに食べずに全部すてるのは悔しいし惜しいので分けていくと、およそ6分の1ほどの綺麗な苺を救い出せた。だが、そのなかのひとつを齧ってみると、かび臭い味がする以前に、やはり青草の淡い香りがするゴムみたいなものだった。


それでも卑しいので、砂糖をかけて、ミルクを注いでポータブルのジューサーでどぼどぼの液体を作って飲もうとした。底にぴたっとつけて猛回転で苺を細かく潰しているはずだが、中間にに浮かんでいるようなものはちゃんと細かく切り刻んでないのではと思い、ちょっと浮かせてスイッチをいれると、わたしの腹部にはもちろん、台所のまな板や包丁の部分にも白とピンク色、そして粒粒の苺や小さな胡麻のような種が飛び散った。


素人は買いも下手だし、保存も駄目。おまけにドリンク作りにも失敗をするありさま・・・
写真はやめた。美しい苺だったら載せてもいいけれども、グニャグニャで凹んで黴の生えている苺は興ざめに違いないから。